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木材の割れと強度の関係

木材は割れると強度が落ちるのか?

 

梁 干割れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある建主さんから

「うちの木材が割れちゃって・・・ 家壊れちゃわないかな・・・」

と、相談の連絡があった。

 

つい最近、弊社で納品したポーチの柱も

外部の日の良くあたる場所に使用したせいか

横並びに使用している数本のうち、1本だけが干割れしてしまった。 

 

 

ちなみに・・・

田村材木店の「天然乾燥施設」。

天然乾燥施設

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この建物は木材を自然に乾燥させるための施設で

壁がなく風の通りがめっちゃよいw

全て日光産のスギでできている。

柱は6Mの120ミリ角材を4本抱き合わせ、筋交いもない。

 

よく見ると・・・

天然乾燥施設 柱 干割

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひゃ~!割れてる。

 

このままじゃ、この施設もたないぞ~

 

なんて事にはなりません。

 

弊社の天然乾燥施設の柱の場合、ボルトで固定しているので

ボルトの位置から割裂が生じる場合を想定しなくちゃいけないけど

単純に割れが入っている事については

全く全然これっぽっちも心配の微塵もミジンコもない!

 

さて、どういうことでしょう。

 

この「木材の割れと強度の関係」。

全国の各研究機関で実証実験がなされ、木材業界ではもう当たり前の話。

業界にいたら、今さら恥ずかしくて聞けないレベルになってる。

 

ここの所、こうした「割れと強度」に関する質問が続いたので

少し小難しくなるが、今後の為に、自身の復習もかねて記載してみよう~

と思うので、長々と記載する事になる?ので、暇な人はご覧ください。

 

我が栃木県が誇る「栃木県林業センター」。

全国の中でも、木材業界にこれほど貢献してくれている研究機関はないでしょう。

民間が今必要としている情報を、民間の視点で研究している。

ちょっと言い過ぎかもしれないけど

全国でも栃木が林業・木材産業の中核を担えているのは

この栃木県林業センターがいるから。

 

そして!木材の割れと強度に関する実証実験のデータ量も日本一!

非常に誇らしいw

 

 

<木材工業Vol.64の文献より>

3.1.3座屈性能

平均座屈強度は、割無材で7.8±1.5Nm㎡、割有材で8.7±2.1Nm㎡を示し、割有材の方がやや高い値を示した。特に、断面12.0㎝正角の場合、座屈強度は、1%水準で割有材の方が高い値を示した。これらの結果より、材面割れによって座屈強度性能は低下しないことが推測された。なお、破壊形状は、割無材と割有材ともに同様であり、割れ部位を起点に変形や破壊が起こることはなかった。(一部抜粋)

 

 

少し専門用語が出てくるので、ちょっと整理してみよう。

 

ちなみに「座屈」っていうのは、主に、柱(はしら)等のように

縦に使用したとき、上から重さが加わると

上と下で固定しているから、横に逃げていって折れちゃう。

って感じのこと。 

座屈

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

干割れもそうだけど、始めから割れを入れておく

「背割れ・背割り」の場合はどうなのか?

 

弊社で、天然乾燥の柱を造ると ↓ こんな感じで切り込み的な背割れを入れている。

柱 背割

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん~

見方によっちゃ、自然に割れた干割れよりも、パックリと割れてる。

というか割っている。

 

こうした「割れ」が入った木材を「柱」に使用した場合

割れた部分が影響して、座屈によって木が折れてしまうのか?

ってことが一つ目の問題。

 

先程記載した栃木県の文献と

2008年10月7日付けで発刊された日刊木材新聞の記事を合わせて

簡単に解釈して説明すると

 

木材は長手方向に強い細胞同士が繊維方向に繋がっている。

基本的には、木材の割れは繊維方向に沿った形でしか発生せず

割れがあっても強度低下はない。

それどころか、実証実験の結果、同じ条件で生産された木材のなかで

干割れが入った木材の方が強かった。というデータもある。

元々体の硬い?強いやつは干割れしやすい。ってことだろう。

 

座屈試験結果表 木材工業

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにヒノキの文献もある。

 

<木材学会誌Vol60 の文献より>

背割り加工がヒノキ正角実大材の座屈、曲げ及びせん断性能に及ぼす影響

ヒノキ正角実大材(10.5cm角)の背割り深さ(材面の幅に対して30及び50%)及び荷重面に対する方向が、座屈、曲げ及せん断性能に及ぼす影響を調査した。座屈性能、曲げヤング係数及び静的曲げ試験における比例限度比は、背割りの有無の間で有意な差は認められなかった。(一部抜粋)

 

  

結論は

干割れしてても、背割れが有っても強度は落ちない!

むしろ強い傾向にある!ってこと。

ただし、接合部に関しては要相談です!

 

 

ちょっと余談になるけど、弊社の社長は年に1~2回ほど

地元の小学校で、「木の話」をしている。

その時に使用するパワーポイントのスライドが

小学生用なので超簡単。一部紹介しましょう。

 

木材 顕微鏡図 木材 顕微鏡図2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木は簡単に説明するとストローのような管の集合体。

例えストロー同士が引き離されても

強さに関しては問題がない。ってとこかな。 

 

 

 

続いては「横架材」。

横に使う材は「曲げ強さ」と「曲げヤング」という数字で強さを測ることができる。

 

横架材 干割

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下の写真は、2004年に栃木県林業センターへ木材を持ち込んで

実際に破壊試験を行ったときの写真。 

その時は4000×120×270(㎜)を中心に、約100本程度を破壊した。

今思えば、実験の為とは言え、折角山から木を切り出して自社で製材したのに

データと共に、薪が沢山出来た。

はぁ~ もったいない・・・

 

 と、こんな感じで、割有材と割無材を破壊して、曲げとヤングを計測する。

破壊試験 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<木材工業Vol.48の文献より>

2.1干割れの曲げ強さに及ぼす影響

干割れが顕著なほど曲げ強さは高い傾向を示している。干割れによって縦断面が大きく欠損した材であっても、曲げ強さが低いとは言えず、むしろ干割れを生じやすい材の曲げ強さは、材質的に高いことが示唆されたものといえる。(一部抜粋)

 

2.2干割れの曲げヤング係数に及ぼす影響

曲げヤング係数に対しても干割れを生じやすい材の方が高い値を示す事がかなり明確に示唆されている。このことは、材が変形しやすいほど表面割れが発生しにくいとされている。(一部抜粋)

 

まとめ

干割れは曲げ強さ及び曲げヤング係数には影響せず、むしろ干割れを生じやすい材はそれらの値が高い傾向を示すことが示唆された。また、干割れを生じやすい材の予測指標としては、偏心率などの視覚的因子よりも、曲げヤング係数が高い推定精度を示すことが分かった。(一部抜粋)

 

※以上の文献から引用された内容は、一部抜粋である事から、記述する内容の責任は田村材木店にあります。記述内容に関する質問やコメントは田村材木店で対応いたします。

 

 

杉 梁 材面割れ

日光杉 材面割

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

田村材木店が製材・生産する部材は「天然乾燥」「ハイブリッド乾燥」が主。

自然に乾燥すれば、芯の入った材は必ずといっていいほど割れる。

 

 

天然乾燥材 構造材

天然乾燥材 構造材2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

割れは強さと乾燥の証明!

 

 

見た目を気にする人もいるけれど、これが原因で建物が傾いたりしちゃう事はない。

使用する箇所に応じて、必要な含水率までしっかりと乾燥させること。

乾燥方法に合わせた施行を行うこと。

これが重要。

 

 

もう一度言おう。割れは怖くない!

 

 

 また、長々と書いてしまった・・・

byたべすぎ 

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